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神楽坂のお祭り

久しぶりに、古本市に参加しました。


集まって顔を見合わせ「何年ぶりだろうね」といいあいました。


すぐに売り場の配置を決め、帳場(レジ)の場所を決め、もくもくと棚を組み立てて、持ち寄った本を出していきます。最初はおぼつかない感じでも、やはり体がしっかり憶えており、徐々に売り場ができあがっていきます。


まち周辺からの「お祭りがある」という高揚感が、ふわっとくる感じでぞくぞくとする。いつもの朝とはまったく別ものとわかる。思い出した!この特別な朝の空気がとてもおいしい!そうでした。売り上げがどうなるか結果が出ていないので期待が高まるためか、浮かれ度合いが増してよりおいしく感じるのかもしれません。


場所は牛込神楽坂。住宅地がひろがり、商店が道沿いに並ぶ、東京でも懐かしい雰囲気が残っているところです。中町図書館の近くにある、病院の駐車場をお借りしました。


早稲田・目白・雑司が谷「わめぞ」は本に関わる仕事の人で構成されていますが、古本屋さんが中心となっています。みちくさ市だけではなくいろいろな場所で古本市をしています。でも、わたしはいつものように古本屋でも新刊書店でもない「本屋」としての参加です。


古本は古物商(書籍商)という免許を持っている人が古書組合に入ってしてお店を持ち、新刊書店は帳合番線を持ち取次(問屋)と契約を交わして、本を販売しています。古本でも新刊でもない、いつも拠りどころなくふらふらとして、さらに今は実店舗を持っていない、きわめて心もとないわたしですが、こうして声をかけてもらえてありがたいです。


今回はあらたな試みで自分で製本した本を中心にして販売することにしました。


ちょうど、なかみも読んで楽しめる豆本を作ろうと思っていたところでした。場所にちなんで泉鏡花の「神楽坂七不思議」か、矢田津世子の「神楽坂」かで迷いましたが、豆本にするには量が多く、「神楽坂七不思議」にしました。


・・・「神楽坂」、最後に雑司ヶ谷霊園でおわる話で、とてもよいお話なんですよ。もちろん「神楽坂七不思議」も、登場するお店がいまだにあったりして興味そそられる、当時の時代を感じることのできる作品です。


店番をしながらたわいもない話でばか笑いをするのも久しぶりなのですが、時折、本人は目の前のこと、聞いたことで何気なく感じるまま口にするのだろうけれど、本を売る生業からの視点で、的を射るような核心を突くことを発したりします。呼吸するよう感じ、こぎみよいタイミングでスパっと出てくる至言は、ただただまっすぐに正直にひとつの道を進んだからこそ得られるもので、それゆえに敬意を払われることになるのだと思います。


そんな唸る感覚もひさしぶり。全部がひさしぶりですが、ちゃんと憶えていました。


神楽坂のお祭りは地元の人が楽しめるものでしたが、子どもたちの喜ぶ声もにぎやかで、おじゃましたわたしたちも「いい一日だったな」という気持ちになれるお祭りでした。

当日、ちょうど雑司が谷もお会式初日でした。待ちに待っていた、お会式です。以前の通りにはいかないけれど、それでもやはり再開のお知らせは、ほっとうれしく思います。


帰り道、とっぷりと日も暮れていましたが、万灯がゆさゆさと流れ、家路を照らしてくれました。


つられて少し浮かれ足になったかしら。


多くの方に来場いただきありがとうございました。

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