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作品『和紙』ができるまで 1

お題が「和紙」となり、調べていたら「まゆみがみ」という言葉が目に入りました。自分の名前を模したような名称に興味が引かれました。漢字で書くと「檀」紙というらしく、和紙の原料は楮なのですが、かつては檀という木が原料であった時代もあったようで、その時から作られている地方の紙でそうした名称で言われている紙があるらしいのです。


その、「まゆみがみ」と言えばコレ!と称されるほど有名だったのが、京より遠く離れた福島の二本松、清少納言もうっとりした(らしい)上川崎和紙。その流れで東野邊薫の『和紙』という小説に出会いました。


「東北文學」に掲載されたもので、のちに、昭和18年に芥川賞を受賞しましたが、刊行されたのは戦争が終わった昭和22年でした。戦中に書いたものと言っても戦争を煽っている感じのものでもなく、読み終えた瞬間は、この時代にこのような物語が世の中に認められていたのだと、とても驚きました。


この物語、ある紙漉き職人が主人公です。日々のあれこれ、時には家族のわずらわしいことを長男として解決しながら、二度目の召集の前日まで、静かに紙を漉くという誠実な男性の話です。紙職人が当時どのような経済状況だったか、紙の漉き方などもわかり、だからこそ、実際、その時代に生きていたのだと感じ取れるようになるような描写もあります。


芥川賞作品として掲載していた文藝春秋も読んでみましたが、よく、わたしたちが今まで見知ったような「戦争」だと思うような記事がたくさんありました。「進め一億火の玉だ」が最近流行りのような使われかたでした。


もしかして、世の中で起こっていることを書いている記事よりも、本当は、小説『和紙』の世界が当時の現実(リアル)だったのではないでしょうか。「この世界の片隅に」という映画がありましたが、それと同じく、この小説は当時の人々の、つつましい暮しが綴られていて、とても共感を得られるものでした。


この小説を、みんなに読んで欲しいと強く思いました。


そこから、これをどう本にしていこうかという作業が始まりました。 続



何タイプか装丁を変えつつ


試作。


こちらは、仮フランス装

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